暑い日や寒い日にエアコンを使っているときに、突然ブレーカーが「バチン」と落ちてしまうと、困りますよね。エアコンは家庭で最も電力を消費する家電のひとつ。不具合や環境によってブレーカーが作動してしまうことがあります。
この記事では、エアコン使用時にブレーカーが落ちる具体的な原因を解説。あわせて、それぞれの原因に応じた対策も紹介します。
ぜひ、これらの知識を身につけ、突然のブレーカー落ちを未然に防ぎましょう。
エアコンのブレーカーが落ちるおもな原因

エアコンを使用したとたんにブレーカーが落ちてしまう・・・。これは夏の猛暑や冬の寒波の時期に起こると、非常に困るトラブルではないでしょうか。
このブレーカーが落ちる現象は、経年劣化や電気の使いすぎや漏電など、見逃せないサインが隠れていることもあります。この章では、それぞれの原因について詳しく説明していきましょう。
経年劣化による不具合
まずひとつめは、経年劣化によるエアコン内部の不具合です。生活空間の快適さを支えているエアコンも、時の流れにはあらがえません。
とくに、10年以上にわたり活躍してきたものは、注意が必要です。経年劣化により、内部の部品や、これらをつなぐ配線などの細部にいたるまで、徐々に機能が低下していきます。
たとえば、電気を通す配線を覆っている絶縁体の劣化です。長年の使用で機能低下してしまうと、本来防ぐべき電気のもれを引き起こしやすくなります。
また冷媒を圧縮する心臓部のコンプレッサーは、内部にかかる負担が積み重なって、起動時に通常よりも大きな電流が流れます。これがブレーカーを落としてしまうこともあるのです。さらに、室外機は常に屋外の厳しい環境にさらされています。
雨風による腐食、ちりやほこりの蓄積、さらには虫の侵入などが、室外機の内部や配線を劣化させる要因になるのです。このように劣化が進行すると、突然ブレーカーが落ちるという形で表面化することが少なくありません。
電流容量のオーバー
契約しているアンペア数が使用容量をオーバーしてしまうのも、原因のひとつです。現代の生活は、冷蔵庫や照明器具、電子レンジやドライヤー、洗濯機など多くの電化製品に囲まれています。
日常的に使用する家電製品は、比較的消費電力が大きいもの。エアコンもまた、家庭内で消費する電力の大きな割合を占める家電です。
家庭ごとに契約している電気の容量、すなわちアンペア数には上限があります。エアコンを使用している際に、電子レンジで調理をしたり、ドライヤーで髪をかわかしたり・・・このような同時使用の場面もありますよね。
その瞬間に、使用する電力の合計が契約しているアンペア数を大幅に超えてしまうことになりかねません。とくに、契約アンペア数が30A以下の家庭では、エアコンのような消費電力が大きい家電を使用するときに気をつけましょう。
ほかの家電との同時使用で容量をオーバーした状態が続くと、安全装置として主幹ブレーカー(アンペアブレーカー)が作動し、家全体の電気が遮断されてしまうリスクがあります。
漏電の可能性
漏電も、エアコン使用時にブレーカーが落ちる原因になります。漏電とは、本来電気の流れるべき回路から電流が外部に漏れ出す現象です。
感電や火災など、非常に危険な事態を引き起こす可能性があります。そのため、電気回路には漏電を検知し、自動的に電気の流れを遮断する漏電遮断器(漏電ブレーカー)が設置されているのです。
エアコンの使用中に漏電ブレーカーが作動した場合、エアコンまたはその配線系統で、漏電が発生している可能性が高いかもしれません。漏電の主な原因としては、以下のようなケースが挙げられます。
- 室外機の内部に雨水が浸入することによる電気系統への悪影響
- エアコンと電源をつなぐケーブル被膜の長年使用、外的要因による破損
- 配線自体の湿気や腐食による劣化、絶縁性の低下
- 電源プラグが接続されているコンセントまわりの結露、清掃時の水ぬれ
これらの漏電が発生した状態を放置すると、感電事故につながります。それだけでなく、漏れた電流が熱を帯び、周囲の可燃物に引火して火災を引き起こすので、危険です。
漏電ブレーカーが作動した場合は、すみやかに原因を特定し、しっかりした対処を行うことが非常に重要となります。
ブレーカーの種類

家庭の電気設備には、安全かつ円滑な電力供給のために、いくつかの種類のブレーカーが設置されているのが一般的です。これらのブレーカーは、それぞれ異なる役割を担っています。
どのブレーカーが作動したかを確認することで、電気トラブル原因を特定する手がかりとなるのです。ここではアンペアブレーカー、安全ブレーカー、漏電ブレーカーについて、それぞれの機能と役割を詳しく解説します。
アンペアブレーカー
アンペアブレーカーは、家庭が電力会社と契約している電気の容量(アンペア数)を超えた電流が流れた場合に、自動的に電気を遮断します。いわば電気系統全体の「門番」のような役割を果たす主幹ブレーカーですね。
契約アンペア数は、同時に使用できる電気製品の総量。この数値を超えてしまうと、アンペアブレーカーがキャパオーバーを検知して作動する仕組みです。
たとえば、契約アンペア数が低い家庭で、複数の消費電力の大きな家電製品を同時に使用すると、アンペアブレーカーが落ちやすくなります。ブレーカーが頻繁に落ちる場合は、電気の使用状況が契約容量に見合っていないかもしれません。
そのような場合は、電力会社に相談して契約アンペア数を増やすことを検討しましょう。問題を根本的に解決できる可能性があります。
安全ブレーカー
分電盤には、家の中の各部屋や特定の電気製品(エアコン、電子レンジなど)ごとに、複数の安全ブレーカーが設置されています。これらの安全ブレーカーは、それぞれの回路に許容以上の電流が流れた場合に、特定の回路だけを遮断する役割があるのです。
これは、特定の場所や電気製品で発生した過電流による事故を防ぐための、個別の「防衛線」のようなものと考えていいでしょう。
もし、家全体の電気が止まるのではなく、特定の部屋のコンセントが使えなくなったり、特定の家電製品(たとえばエアコン)専用のブレーカーが落ちるような場合は、この安全ブレーカーが作動している可能性が高いと考えられます。
この場合、その回路に接続されている電気製品の数を減らすか、消費電力の低い製品に切り替えることで改善が見込まれるかもしれません。また、特定の家電製品の故障が原因で過電流が発生している可能性も考える必要があります。
漏電ブレーカー
漏電ブレーカーは、電気が本来意図されたルートではなく、誤って別の経路(たとえば地面や人体)に流れ出てしまう現象を検知した際に、瞬時に電気の流れを遮断する重要な安全装置です。
これは、感電事故や漏電による火災などの深刻な事態を防ぐための「最後のとりで」です。
漏電発生により漏電ブレーカーが作動することで、人体への危険な電流の流れを遮断し、電気回路の発熱による火災のリスクを低減します。もし、漏電ブレーカーが頻繁に作動する場合は、家の中のどこかで漏電が発生しているかもしれません。
これを放置すると、重大な事故につながる恐れがあります。原因がわからない場合は、無理をせずに専門の電気工事士に点検と修理を依頼しましょう。
ブレーカーが落ちないようにするには

エアコン使用時のブレーカー落ちほど、夏の暑さや冬の寒さの中で不快なものはありませんよね。ここでは、そのような事態を未然に防ぎ、快適な電力利用を実現するための具体的な対策を詳しく解説します。
同時に電化製品を使用しない
同時に電化製品を使用しないように注意を払いましょう。家庭内の電気使用量が瞬間的に増加すると、アンペアブレーカーが過負荷を検知して作動してしまいます。
とくに、消費電力が大きい電化製品の同時使用は、ブレーカー落ちしやすいリスクがあるのです。エアコンは、起動時や高出力運転時に比較的大きな電力を消費します。
エアコンを使用する際には、他の高消費電力家電の同時使用はできる限り避けるように心がけましょう。
- 電子レンジ
- ドライヤー
- IHクッキングヒーター
- 電気ストーブ
- アイロン
- 洗濯乾燥機
これらの電化製品は、時間帯をずらして使用する、あるいは使用頻度の低い家電は電源を切っておくなど、工夫が必要です。ちょっとした意識が電力のピークを抑え、ブレーカー落ちのリスクを大幅に減らすことにつながります。
契約アンペア数をあげる
契約アンペア数をあげることで、ブレーカー落ちを防ぐ方法もあります。頻繁にブレーカーが落ちている場合、家庭の電気の使用量が契約しているアンペア数に対して不足しているかもしれません。
現在の契約アンペア数は、電力会社の検針票や会員ページなどで確認できます。もし、日常的に複数の家電製品を同時に使用する機会が多い、または家族構成の変化で電気の使用量が増えたと感じる場合は、見直しを検討しましょう。
契約している電力会社に連絡することで、契約アンペア数の変更手続きを行えます。ただし、場合によっては電力会社の工事が必要になることもあるため、事前に確認しておくと安心でしょう。
日常の使用に見合った契約アンペア数にすることで、電力の使いすぎによるブレーカー落ちを未然に防ぎます。より安心して電気を使用するためには、欠かせないポイントです。
専用回路を増設する
専用回路の増設も有効な手段です。エアコンは、他の家電製品と比較して使用時間も長く比較的大きな電力を消費します。
そのため、可能な限り専用の電源回路を用意するのが理想的です。専用回路を設置することで、他の電化製品の電力使用の影響を受けにくくなります。ブレーカー落ちのリスクを大幅に低減できるかもしれません。
とくに、200V仕様のエアコンは、より大きな電力が必要です。安全かつ安定した電力供給のためにも、専用回路の設置が望ましいでしょう。
専用回路の増設には、電気工事士による専門的な工事が必要になります。信頼できる業者に相談し、安全な工事を行ってもらいましょう。専用回路を設けることで、エアコンの性能を最大限に引き出し、快適な空調環境を安心して維持できます。
エアコンのメンテナンスを行う
基本的なことになりますが、エアコンは定期的にメンテナンスをしましょう。本体や室外機の定期的な清掃、エアフィルターの定期的な交換をおこたると、エアコンの効率を低下させるだけでなく、予期せぬトラブルの原因になります。
たとえばフィルターが目詰まりすると、空気の循環が悪くなります。その結果、エアコンに余計な負荷がかかって過電流が発生し、ブレーカーが落ちてしまう要因になりかねません。
また、室外機にゴミや汚れが積もると、冷却効率が低下してしまいます。さらに、エアコンの使用中に異音や異臭がする、冷暖房の効きが以前より悪くなったなどの異常があった場合は、故障の兆候を疑いましょう。
これらを放置すると、ブレーカーが頻繁に落ちるだけでは済まなくなります。最悪の場合は、火災などの重大な事故につながる危険につながりかねません。そのため、少しでも異常を感じたら、早めに専門業者に点検・修理を依頼しましょう。
定期的なメンテナンスと早期の修理対応は、エアコンを長く安全に使用するための基本。ちょっとした手間をかけることで、ブレーカー落ちの予防にもつながります。ぜひ、やっておきましょう。
エアコン使用時にブレーカーが落ちたらあわてずに対処しよう
エアコンの使用中に突然ブレーカーが落ちたら、まずは冷静に状況を確認することが大切です。どのブレーカーが作動したのか、他の家電と同時使用がなかったか、室外機やコンセントまわりに異常がないかを順にチェックしていきましょう。
しかし、自身で原因を特定したり、対処したりすることが難しい場合もあります。何度もブレーカーが落ちる状況が続く場合は、無理をせずに専門の電気工事業者やエアコン修理業者に相談するのが安心です。
エアコンのトラブルの原因を正しく把握しリスク対策を講じることは、安心・安全に使用するために非常に重要です。日ごろからエアコンの状態に注意を払い、もしもの場合に備えておきましょう。